パリ移住に関連する便利情報
October 13, 2024 | 12 min read | 111 views
パリに引っ越して1年が経ち、仕事に関する振り返りの記事を以前書きましたが、生活面でも多くの新しい体験がありました。そこで、今回は生活面での学びや便利情報をまとめたいと思います。まだ在住1年でわからないこともあるため、情報募集中の項目については「情報求む」と記しました。皆さんの「生活の知恵」もぜひ教えてください。
ビザ取得
私は、パスポートタラン(passeport talent)という種類のビザを会社にスポンサーしてもらいました。会社がエージェント(Jobbatical)をつけてくれたので、エージェントの指示に従って書類を準備するだけで手続きはスムーズに進みました。
ビザ申請の最大の関門はフランス大使館での面接でした。まず、申請には事前予約をした上で大使館に赴く必要があります。時期によっては1ヶ月先まで予約が埋まっていることもあるので、準備は余裕を持って進めましょう。ただし、直前でキャンセルが出ることもあるので、ギリギリになってしまった場合は予約サイトを頻繁にチェックすると空きが見つかるかもしれません。それから、公式サイトをよく読んで必要書類を全て集めることが大切です。当たり前のことではありますが、ここで引っかかって渡航延期を余儀なくされる方が多いと聞きます。私は「会社の登記簿の原本が不足している」と指摘されてしまいましたが、幸い申請は受理されました。追ってフランスから書類を郵送してもらい、無事ビザを発行してもらうことができました。
就労ビザの場合、日本で発行したビザは有効期間が3ヶ月程度になっているはずで、フランス入国後に滞在許可証(titre de séjour)を別途発行する必要があります。これもオンラインで申請した後に近くの役所に赴くという流れになります。ここからは悪名高き「administration française」になるので、覚悟が必要です。私は前述の書類申請を遅滞なく行いましたが、滞在許可証の原本を受け取ることができたのはフランス入国4ヶ月後、ビザの有効期限が切れた後でした。それも、寒さの厳しい12月に数時間屋外で待たされるという試練付きでした。
家探し
パリでの家探しは非常に難しいと言われています1。一般的には、最初に数週間のホテルかアパートに滞在し、その期間に気に入った部屋を契約できるまで内見と応募を繰り返すという手順を取るそうです。インターネット上でも、『パリでアパルトマンを借りる』をはじめ多数の体験談を読むことができます。
私はというと、幸運にも完全オンラインで良い物件を見つけることができました(本当は内見や、せめて街の様子を見に行くくらいのことはするべきでしたが、時間が取れずやむを得ず…)。まず、日系不動産会社であるユーロエステートが出している『パリ全20区の治安まとめ』を見つつ、通勤時間と家賃のバランスを見ながら大まかな場所を絞り込みました。治安については同記事にもあるように、通り一つ違うだけで様子が異なるので、「危険」と言われている区にも穴場があったりしますが、特にオンラインで探す場合は安全側に倒して探すのがいいと思います。その後はユーロエステートやLodgis、SeLogerなどの検索サイトで条件に合う物件を探し、気になったいくつかの物件を並行して話を進めました。
最終的にはLodgisに掲載されていた物件を契約しました。契約時には給与明細、雇用契約書など支払い能力を証明するための書類一式、および住宅保険への加入を要求されました。また、家賃の3倍の月収を持つ人の保証が必要でした(日本の給与水準に鑑みるとなかなか厳しい条件ですが、幸い身内で何とかなりました)。この辺りは不動産会社や大家の方針によって変わるらしいのですが、私はあまり詳しくありません。
一度家が見つかっても安心できないのがパリの怖いところです。大家から不当な家賃の値上げを要求されたりなどのトラブルが起きて、また家を探さなければならないという話もよく聞きます。新生活が落ち着くまでは次の引越しに備えてなるべく身軽にしておくことをお勧めします。大使館の情報にも目を通しておくと良いでしょう。
引越し
新居が家具付きだったため、持っていた家財道具は処分するか実家に送るかしました。服や本などは日本通運の船便で送りました。大きな段ボール20箱で20万円程度でした。発送から受け取りまで2-3ヶ月かかりましが、追跡が一切できなかったため途中で疑心暗鬼になることがありました。
改めて東京からパリへの移住費用を計算してみたところ、大人二人で70万円弱でした。内訳は航空券25万、船便20万、パリでの物件探しの仲介手数料8万、ビザ手続き関係8万などです。
— Shion Honda (@shion_honda) January 17, 2024
船便が荷物の価値に比して高いですが、全体としては意外と安く済んだように思います。
在外選挙人名簿登録
引越しでバタバタしていると忘れがちなのが、在外選挙人として選挙権を行使できるようにするための手続きです。転出届の提出時から転出予定日までの期間に国内で「出国時申請」をする必要があります。詳しくはこちらを参照してください。
インターネット
Wi-Fiは設定済みだったので到着初日から使うことができました。SIMカードは近所のFreeの店舗で購入しました。Freeはヨーロッパ全域で使えて月額12ユーロと低価格なのが魅力ですが、人混みで接続が悪くなるのが欠点です(イベントの帰りに道を調べるときなどに不便です)。
銀行口座(情報求む)
LouvreにあるCaisse d’EpargneのJapan Deskで開設しました。クレジットカードも発行しました。
急いでいたこともあり、あまり比較検討せずに決めてしまいましたが、Revolutなどのネット銀行の方が口座維持手数料が安いのだろうと思いつつ乗り換えられていません。詳しい方の情報をお待ちしています。
ちなみに、日本での銀行口座は解約して、SMBC信託銀行プレスティアの口座に集約しておくと諸々の管理が楽になると思います。送金先の登録に国際電話が必要という罠がありますが、これはSkypeを使うことで安く済ませられます。
海外に移住する方は三井住友プレスティアで口座を作ることをおすすめします。
— rose (@ruon_444) August 3, 2024
海外在住でも口座を保持でき、送金額も限度なしとのこと(億を超える場合も手続きすればOK)
駐在や留学などの短期でなく、永住して口座が持てるおそらく国内唯一の銀行では? https://t.co/olE1FLGsO1
プレスティア以外で送金する場合にはWiseがお勧めです。
国民健康保険
国民健康保険(Sécurité Sociale)の加入手続きについては下記の記事が参考になります:
- フランスの国民健康保険に登録する
- ameliを通してフランスの健康保険に加入する方法 in 2021 | フランスと研究とくまちゃんと
- フランスの国民健康保険 Sécurité sociale の加入手続き
私の場合は、社会保障番号は申請から数ヶ月で発行されたものの、Carte Vitaleが届くまでに1年かかりました(一方、妻は2ヶ月で届いていました)。聞いた中での最高記録は2年です。フランスのお役所仕事は恐るべしです。電話で催促すると早くなるという噂もありますが、2年かかった人も何度も電話していたそうなので、効果は不明です。
Carte Vitaleが届いたら、かかりつけ医の登録ができるようになります。Doctolibで近くの一般医を探して面会の予約を入れましょう(参考)。かかりつけ医を通さずに治療を受けると、保険金の払い戻しをフルに受けられないので、注意が必要です。
ちなみに、Carte Vitaleがなくても、社会保障番号があれば払い戻しを受けることはできます。その場合、CPAMに必要書類を郵送する必要があります。また、かかりつけ医がいない状況だと、すぐに医者の予約が取れないかもしれません。Sector 3の医者であれば即日でも面会できることが多いですが、自己負担金額が高くなるので、極力Sector 1か2で探すことをお勧めします。詳しくはこちらの記事を参照してください。
確定申告
フランスでは毎年4-6月が確定申告のシーズンです。フランスでは日本とは異なり、源泉徴収済みの人や収入のない人も含め全世帯に確定申告の義務があります。しかもこれが日本の銀行口座を全て申告するなど厄介ごとが多く、かつ初年度は紙に記入しなければならず、フランス語がわからない私は妻に全てをお願いしました(懺悔)。私はこれ以上の情報を持っていないので、詳しくはこちらの記事などをご覧ください。
資産運用(情報求む)
前提として、日本の証券会社は基本的に日本非居住者の金融商品取引を認めていません。そして、うちほとんどの証券会社は日本非居住者の資産の保有や口座の維持を認めていません。例外として、ソニー銀行は資産の保有を認めているので、保有し続けたい資産は移住前にこちらに移しておくことをお勧めします。
フランスでの資産運用は、まずは非課税の貯蓄口座であるLivret Aに満額までお金を入れるのが基本です。投資ではなく貯蓄ですが、そもそもLivret Aには22,950ユーロまでしか入れられないので、このくらいの金額を貯蓄口座に入れておくのは妥当な選択だと思います。
Livret Aの満額を超えた分については別途運用方法を考える必要があります。ここからが悩ましいところで、フランスでは日本ほど投資熱が高くないらしく、知人に聞いても投資をしていないか不動産を買っているという答えが大半で、あまり参考になりません。フランスにもPEAという日本のNISAのような制度がありますが、この記事で比較されているように、NISAほどメリットが明確ではありません。私の場合はいつまでフランスに住み続けるかもわからないので、せっかくなら居住国に縛られないオンライン証券会社で口座を持ちたい(基本的には投資信託での長期投資)と思っているのですが、まだ満足のいく会社を見つけられていません。詳しい方の情報をお待ちしています。
防犯(情報求む)
パリで生活していると、色々な犯罪を見聞きします。命を狙われるような凶悪犯罪ではないにしても、スリ、空き巣、自転車の盗難、車上荒らし、恐喝などは身近で聞いたことがあります。中でもスリは本当に多く、地下鉄でも「スリにご注意ください」という日本語のアナウンスがあるほどです。
以下に、私が防犯で気をつけていることを挙げます(効果の証明ではありませんが、私と妻はまだ何の被害にも遭っていません)。ここは観光で来られる方にも参考になるかと思います。
- 財布を持ち歩かない。 これは根本的なスリ対策になります。パリでは露天など一部の例外を除いてほとんどの場合タッチ決済が可能なので、私はスマホのタッチ決済で全ての買い物を済ませています。スマホにもネックストラップをつけてスリ対策をしています
- 夜間に不用意に出歩かない。 書くまでもないことですが、念のため。パリは夜でも人出が多く概ね安全です(地域にもよりますが、女性が普通に一人で歩いているくらいです)が、無用なリスクは取らないに越したことはありません
- 知らない人に話しかけられても反応しない。 アンケートや困っている人を装って話しかけ、気を逸らしている間にスリを働く、もっと悪い場合は人気のないところに連れ出して恐喝する、といった手口があります。私は確実に安全だと判断できる場合以外は、話しかけられても反応しないようにしています。本当に困っている人には悪いですが、自衛のためなので仕方ありません
- 観光地に行く時は一層の警戒をする。 スリにとって最も簡単な標的は観光客なので、Champs-Elysees通りなどの観光地やその周辺の地下鉄駅はスリの頻発地帯です2。観光地を訪れる場合は一層の警戒をしましょう。個人的に特に狙われやすいと思うのは、電車の券売機です。在住者は定期券などを使うことが多いので、券売機を使っている人はおおかた観光客だとわかります。そして、決済の時に財布かスマホを取り出すので、それらがどこにしまってあるのかも観察することができます。何かに気を取られている時にそれを盗むというのは、プロのスリからすれば造作もないことです。というわけで、券売機で切符を買うのはリスクを伴う行為なので、パリに来られる方はÎle-de-France Mobilitiesなどのアプリを用意しておくと良いでしょう。
他にも防犯のためにするべきことがあればぜひ教えてください。
お得情報(情報求む)
知っておくとお得な情報を以下に列挙します。
- スーパーマーケットは近所のCarrefour Marketを利用しています。Carrefourはフランス最大のスーパーマーケットチェーンで、パリでも至る所にあるので便利です。店舗数はそこまで多くないですが、ドイツ系のLidlとALDIの方が安めです。
- アジア系スーパーはTang Frèresが安くて品揃えもいいです
- 引越して間もない頃に必要になるような雑貨系は、IKEA、HEMA、GiFi、Normalあたりを見るといいと思います。特にNormalはシャンプーや化粧品などが安いです
- 日本の百均のようなものはなく、何か便利グッズを買おうと思っても手に入らないか、上記の雑貨屋で3倍くらいの値段を出して買うことになります。雑貨系は日本から持参することをお勧めします。特にフランスのラップは高い上になぜか異常に切りづらいです(旭化成さん助けて…)
- 日本から持参するもので言うと、証明写真と戸籍謄本のコピーはいくつか余分に持ってくるといいです。フランスでも当然印刷はできますが、持参した方が圧倒的に安いです。
- 電化製品はAmazonで買って近くの受取サービスで受け取るのが便利です。もしFnacなどの家電店で買う場合は、銀行の口座情報を教えないように注意してください。悪質な保険に加入させようとしてきます。
- レストランの予約は、TheForkというアプリを利用すると最大50%の割引を受けられます。当然、超人気店は割引をしていませんが、パリのレストラン予約は20時くらいがピーク時間帯なので、18-19時で探すとそれなりに評判のいい店でも割引を受けられることがあります。
- 日本食レストランは、Opéraの日本人街にたくさんあります。日系スーパーや書店(ジュンク堂とブックオフ)もあります。
- 一部の美術館は毎月第一日曜日に無料開放をしています
- 毎年9月にヨーロッパ文化遺産の日というものがあり、国会議事堂をはじめ普段は非公開の施設を見学できます
他にもお得情報があればぜひ教えてください。
お役立ちリンク集
最後に、情報収集で特にお世話になった日本語のWebサイトを列挙します。
- フランス生活。~「仕事」でもなく「結婚」でもなく、「住む」ために移住した 30代女子のフランスレポート~
- Twitterフランス生活役立ちアンケートまとめ|merushi
- パリのソフトウェアエンジニアの生活
- みち|note(投資関係の情報が多いです)
- OVNI
- ET TOI(エトワ)| フランス情報メディア
- MixB
本記事も、どなたかのお役に立てれば幸いです。
Written by Shion Honda. If you like this, please share!