マリオカートで結婚後の名字を決めた話
September 27, 2020 | 5 min read | 3,624 views
先日、結婚をして、結婚後にどちらの名字を取るかをマリオカートで決めたのですが、そのことをツイートしたところ、執筆時点で1.1万いいねという大きな反響をいただきました。
結婚しました!
— Shion Honda (@shion_honda) September 24, 2020
(現行法下では夫婦別姓を選ぶことができないので、公平を期すため名字をマリオカートで決めました。結果、相手方の名字をとることになりましたが、通名はこれまで通り「本田」を使います。今後もよろしくお願いいたします。) pic.twitter.com/0Q116FNBdS
やや奇抜な印象を与えてしまったと思いますが、これは夫婦の熟慮の結果決めたやり方です。この記事では、このような決め方に至った理由や、実際に名字を変えるのに伴った苦労、選択的夫婦別姓の現状について書きます。
なぜマリオカートで決めることになったのか
現在、民法では夫婦同姓が定められているため、結婚する際には一方がもう一方の姓に合わせる必要があります。どちらを採るかについてはそれぞれの事情や決め方があるのだと思いますが、厚生労働省が2016年にまとめた「婚姻に関する統計」では、2015年に婚姻した全夫婦のうち、妻の氏を選択したものはわずか4%だと報告されています。女性の社会進出が進み、夫婦共働きが一般的になった現在でも、こと結婚に関しては男性優位の価値観が残っていると感じることが多々あります。
私たち夫婦は、夫婦間の平等を重要視しています。また、前提として、私たちは同年齢で、お互いの名字に強い選好はなく、結婚後も各々の名字で仕事を続ける予定でした。したがって、どちらが改姓しても同程度の心理的・作業的負担が発生することが想定されました。この状態で「話し合い」で決めると、どちらか一方が妥協し、もう一方はそれを申し訳なく思い続けるという結果になってしまいます。そこで、「恨みっこなし」ということで確率的な要素のある勝負事で決めることにしました。勝負事にはじゃんけんやトランプなどいろいろありますが、二人が好きで、かつ実績値で勝敗が拮抗していたマリオカート(スマホアプリ版)を採用しました。プレイ中の画面を録画しておくと後でいい思い出になるという目論見もありました。
この記事を書くにあたって、他の夫婦がどうやって名字を決めたかを少し調べたので、目に入った範囲でいくつか挙げておきます。
あとは、じゃんけんで決めた例もいくつかTwitterで見かけました。
改姓とそれに伴う負担
3ゲーム先取のマリオカート決戦の末、私が負けて相手方の名字になることが決まりました。名字が変わると、公的な身分証や契約書関係の名義の変更が必要になります。具体的な内容はゼクシィの記事が詳しいですが、平日に役所や銀行を回らなければならないため、なかなか面倒です。1日に数十回も新しい名前を書かされたため、新姓に慣れる良い訓練にはなりましたが。
もし自分が女性で、「慣例的に妻が夫の名字に合わせるから」という理由だけでこの手続きを強いられたら腹が立つだろうなと思いました。また、そもそも名字を変えなければ、どうやって名字を決めるかの議論も面倒な手続きも発生しません。
選択的夫婦別姓について
ここまで読んで、「なぜ夫婦別姓が認められないのだろう?」と疑問に思った読者もいるかもしれません。夫婦の姓について、法務省のサイトには
明治31年民法(旧法)成立
夫婦は,家を同じくすることにより,同じ氏を称することとされる(夫婦同氏制)。
※ 旧民法は「家」の制度を導入し,夫婦の氏について直接規定を置くのではなく,夫婦ともに「家」の氏を称することを通じて同氏になるという考え方を採用した。
昭和22年改正民法成立
夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称することとされる(夫婦同氏制)。
※ 改正民法は,旧民法以来の夫婦同氏制の原則を維持しつつ,男女平等の理念に沿って,夫婦は,その合意により,夫又は妻のいずれかの氏を称することができるとした。
とあり、現在の夫婦同姓制度が明治政府下で導入された家制度の名残であることが読み取れます。これをもう一歩進めて、「夫又は妻の氏を称するか、または各自の氏を称するかを選択できる」ようにしたいのが選択的夫婦別姓の目指すところです(参考: 改正案要項)。
ちなみに、「ニュー選択的夫婦別姓訴訟」で司法に選択的夫婦別姓の実現を訴えかけているサイボウズ社長・青野慶久氏らは、民法ではなく戸籍法に
婚姻により氏を変えた者で婚姻の前に称していた氏を称しようとする者は、婚姻の年月日を届出に記載して、その旨を届け出なければならない。
という一文を追加することを主張しており、法務省の改正案とは違ったアプローチをとっているようです。
内閣府の世論調査結果を見ると50歳代以下を中心に選択的夫婦別姓制度は支持されており、法務省のサイトからも民法改正に前向きな姿勢が読み取れます。しかし、肝心の立法府では伝統的家族観を維持したい保守層を中心に根強い反対があり、長らく議論が進展していないのが現状です。反対派の主な主張は2009年に参議院に提出された「選択的夫婦別姓の法制化反対に関する請願」によくまとまっていますが、読んでわかる通り、極めて主観的なお気持ち表明と合理性に欠けた推論に終始しています。
9月16日に菅内閣が発足しました。菅首相自身は選択的夫婦別姓に対して「慎重派」だそうですが、法務大臣に任命された上川陽子氏は賛成派だということなので、今後議論が進展していくことを期待したいです。
Written by Shion Honda. If you like this, please share!